東京高等裁判所 昭和32年(う)2179号 判決 1958年10月29日
控訴人 被告人 飯島伝三郎
弁護人 三浦徹
検察官 近藤忠雄 外二名
主文
本件控訴を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人三浦徹提出の控訴趣意書(同弁護人提出の控訴趣意書補充申立と題する書面を含む)に記載してあるとおりであるから、これを、ここに引用して次のとおり考察をする。
論旨第六点。
外国人登録法第十八条第一項第二号の規定には、第三条第一項の規定による申請に関し虚偽の申請をした者とあつて、苟くも同法第三条の規定に従い外国人登録の申請をするに当り、これが申請に関し、これが虚偽の申請をした場合には、その情を知つて現実にこれが申請行為に出でた者は勿論これに共謀した者も、その者達が同法にいわゆる外国人(同法第二条第二項参照)に該当する登録義務者であると否とを問わず、同法第十八条所定の罪責を免がれない。証拠上外国人たる夏国振のため現実には虚偽申請の実行行為に出でた者は、原審相被告人邵厚福ながら、これとの共謀にかかる原判示第三の被告人飯島伝三郎の所為において到底同法第十八条第一項第二号に該当するものとして同条所定の罪責を免かれ得べきかぎりではない。所論最高裁判所判例をもつてする原判決の非難は採用するに由なく、
論旨もまた理由がない。
よつて、本件控訴の趣意は、すべてその理由がないから刑事訴訟法第三百九十六条に則り本件控訴を棄却し、訴訟費用の負担につき同法第百八十一条第一項本文を適用して主文のとおり判決をする。
(その他の判決理由は省略する。)
(裁判長判事 三宅富士郎 判事 河原徳治 判事 下関忠義)
弁護人三浦徹の控訴趣意
第六点原判決は法令の解釈適用を誤つたものである。
原判決は第三の事実につき外国人登録法第十八条第一項第二号同法第三条を適用している。
この点に関し昭和三十一年十二月二十六日最高判決により不法入国者に対し登録義務を認むべき旨明らかにせられたのである。然しながら本件被告人は日本人で前記判例の不法入国者でないから登録義務ということは全然問題にならない(従つて前記最高判例と無関係)。即ち同法条は日本人である被告人には適用する余地のないものであるから原判決が前記法条を適用したことは誤と云わねばならない。
(その他の控訴趣意は省略する。)